ライカのオールドレンズのクセ玉7選

ライカのオールドレンズのクセ玉7選

人とはちょっと違うレンズを使いたい、ライカの真髄を味わってみたい、そんな方にオススメなのがライカのオールドレンズの中でもクセ玉と呼ばれるレンズです。

軽い癖でまだまだ使いやすいものから、一癖も二癖もあるものまでさまざま。レンズに過度な刺激を求めるあなたへ、ライカの中では定番のものも含めてとっておきのクセ玉レンズを紹介します。

広角小口径の渋すぎるクセ玉 Summaron 28mm f5.6

Summaron 28mm f5.6
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Summaron 28mm f5.6のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
4群6枚
マウント
ライカL、ライカM
焦点距離
28mm
F値
5.6
画角
76°
絞り羽根数
8枚
重量
150g
最短撮影距離
1m
フィルター
A36
フード
12500 (SOOBK)
製作年
1955-1963
カラー
シルバー
市場価格
約150,000-200,000(300,000)円


クセの特徴

クセ度合い
弱い  強い
使いやすさ
悪い  良い

中心が非常にシャープで外側に行くに従い崩れていくような描写です。画面内の写したものにグッと重心が寄るような、重みをもたらす効果があるように感じます。

オリジナルとリバイバルレンズでは発色が異なり、オリジナルのほうはレンズそのものの劣化もあって抜け感が劣りますが、その抜け感の悪さが逆に独特のクセを出していると思います。

Summaron 28mm f5.6PHOTO BY HM

クセの使いみち

被写体に強くフォーカスしたいとき、または真実味を出したい時にこのレンズは合うと思っています。逆に軽くラフに撮ってもグッと妙な趣が出やすいので、ハイキーやメルヘン、カジュアルな写真には向きません。

徹底したリアリズムを打ち出すスナップにこそ力を発揮するレンズではないでしょうか。


準広角のクセ玉 Summilux 35mm f1.4 1st

Summilux 35mm f1.4 1st (第1世代)
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Summilux 35mm f1.4 1st (第1世代)のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
5群7枚
マウント
ライカM
焦点距離
35mm
F値
1.4
画角
64°
絞り羽根数
10枚
重量
245g
最短撮影距離
1m
フィルター
E41
フード
12522 (OLLUX)
製作年
1960-1966
カラー
ブラック / シルバー
市場価格
約1,000,000-円


クセの特徴

クセ度合い
弱い  強い
使いやすさ
悪い  良い

開放でほわっと滲むレンズはたくさんあります。しかしその中でもこのレンズが特徴的で人気を博する理由はその芯のある上品さではないでしょうか。

ただ滲んで崩れているというより、像が芯を残しつつ、その周りに被写体の雰囲気を形にしているかのような写り。元々絞ると非常に細やかな描写をするズミルックスの能力があるからこそなせる写りなのかもしれません。

海外では真の「King of Bokeh」と呼ばれるとか呼ばれないとか。

Summilux 35mm f1.4 1stPHOTO BY Oboist

クセの使いみち

至るところでよく称賛されているレンズですが、これじゃじゃ馬レンズなのです。過去「使えない!」「壊れている!」と言われ投げ出した人も多いレンズです。それなりの覚悟がいるレンズですし、実際この開放描写を上手く使いこなすのは難しいです。

情報量の多い被写体を開放で撮ると全体がボワッとして何をみて良いか分からなくなるので、情報量が少ないものと相性が良いです。また硬質なものよりも柔らかいものや、アナログなもの、古いものと相性が良いと感じます。ただ、どうもすべて叙情的な方向に持っていってしまうので、それなりの工夫が求められるレンズですね。


標準大口径のクセ玉 Summarit 50mm f1.5

Summarit 50mm f1.5
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Summarit 50mm f1.5のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
5群7枚
マウント
ライカM、ライカL
焦点距離
50mm
F値
1.5
画角
45°
絞り羽根数
16枚
重量
320g
最短撮影距離
1m
フィルター
E41
フード
12520 (XOONS)
製作年
1949-1960
カラー
シルバー
市場価格
約80,000-200,000円


クセの特徴

クセ度合い
弱い  強い
使いやすさ
悪い  良い

なんといっても近接開放でのクセのあるぐるぐるボケが特徴です。また光を多く取り込むとフレアをまとって、ハイライトが滲みます。遠景だとテクスチャーは描きつつ、ほんわかした感じに。この雰囲気はちょっとヘクトール73mmに通じる雰囲気もあります。

全体的にあっさりした色乗りで、コントラスト重視の描写です。ただ絞るとキリッとします。

Summarit 50mm f1.5PHOTO BY J

クセの使いみち

これはもう何を回したいか。ぐるぐる回したいものを回すしかない!と言いたいところですが、回るのはボケるほうなので実際悩むところではあります。

個人的にこのぐるぐるボケというのは妖しさの象徴みたいなものに見えるので、あまり端正なものには向きません。可憐な植物などより夜のクラブで人を撮ったほうが100倍面白い画になるのではないでしょうか。


写らないのに写る標準のクセ玉 Summar 50mm f2

Summar 50mm f2.0
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Summar 50mm f2.0のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
4群6枚
マウント
ライカL
焦点距離
50mm
F値
2
画角
45°
絞り羽根数
6枚/10枚
重量
160 / 180g
最短撮影距離
1m
フィルター
A36
フード
SOOMP
製作年
1933-1940
カラー
ニッケル / シルバー
市場価格
約50,000-200,000円


クセの特徴

クセ度合い
弱い  強い
使いやすさ
悪い  良い

暗いところから急に明るいところへ移ったときの目の慣れない感じ。ズマールを表現するならそんな印象でしょうか。光をダイレクトに捉えても、完全には掴み取れずにこぼれてしまう。そんな不思議なレンズです。

どこか懐かしくレトロに写り、記憶の中の現実を写しているような錯覚さえもたらします。

Summar 50mm f2.0PHOTO BY Mike Maguire

クセの使いみち

淡く儚げな描写が得意なズマール。なんてことない日常もドラマティックに描き分けるので、気軽に日々撮影したい人に向いているレンズです。もちろん作品や方向性のある写真にも向いていて、使い方次第で懐の広さを見せます。

ある意味オールマイティなレンズとも言えそうです。


中望遠大口径のクセ玉 Hektor 73mm f1.9

Hektor 7.3cm (73mm) f1.9
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Hektor 7.3cm (73mm) f1.9のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
3群6枚
マウント
ライカL
焦点距離
73mm
F値
1.9
画角
34°
絞り羽根数
12枚
重量
460g
最短撮影距離
1.5m
フィルター
E39, A42
フード
FGHOO
製作年
1931-1942
カラー
ブラック / ニッケル / シルバー
市場価格
約250,000-500,000円


クセの特徴

クセ度合い
弱い  強い
使いやすさ
悪い  良い

ヘクトールは表現が難しいですが、ズミルックスのような透明感ではなく、粘度の高い空気や質量を伝えるような表現をします。色再現性にクセがあり、わかりやすくいうと古ぼけた色、古めかしい色になりやすいです。まぁモノクロ時代のレンズなので、気になるなら現像で調整という感じ。

このレンズの良いところは独特の「歪ませ方」にあると思います。細かく見ると丁寧によく写っているのですが、全体を見ると現代基準ではあまり写っていない、そのアンビバレンスがユニークなのです。

Hektor 7.3cm f1.9PHOTO BY HM

クセの使いみち

抽象的な表現ですが、ヘクトールで写したものは生命力が増す気がします。あくまで気がする程度ですが。それが無機物だったとしても有機的に写るので、建物であれば記憶の中のワンシーン、もしくは何か曰く付きの場所のように見えたりします。

ベタなところでは古いもの、味のあるものに適してますが、美化するというよりドロドロとした内面を引き出すようなイメージでしょうか。未だに難しいレンズだなと思います。


唯一無二の中望遠クセ玉 Thambar 90mm f2.2

Thambar 9cm (90mm) f2.2
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Thambar 9cm (90mm) f2.2のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
3群4枚
マウント
ライカL
焦点距離
90mm
F値
2.2
画角
27°
絞り羽根数
20枚
重量
500g
最短撮影距離
1m
フィルター
E48
フード
SHADE
製作年
1935-1942
カラー
ブラック
市場価格
約400,000-550,000円


クセの特徴

クセ度合い
弱い  強い
使いやすさ
悪い  良い

技術的には球面収差を大幅に過剰補正してソフトな描写に施したレンズです。

ただタンバールは表現が難しいんですよね。ほかに似ているレンズもないですし。ひとついえるのは写実的ではないってことでしょうか。どこか現実味を帯びない表現は写真と絵画の中間を揺れ動くような印象。

クセの使いみち

使いどころがハマればすごい画になり、間違えると大火傷する。そんなレンズです。だから非常に難しい。都市や雑踏とはあまり相性が良くなく、90mmという画角も相まって、単一のオブジェクトに絞った方が良い気がします。上手に使いこなしている人をまだあまり見ないレンズです。


味わいのある望遠クセ玉 Hektor135mm f4.5

Hektor 135mm f4.5
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Hektor 135mm f4.5のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
3群4枚
マウント
ライカL、ライカM
焦点距離
135mm
F値
4.5
画角
18°
重量
440g-555g
最短撮影距離
1.5m
フィルター
A36, E39
フード
A36:12530 (FIKUS)、E39:12575 (IUFOO)
製作年
1933-1960
カラー
シルバー
市場価格
約10,000-30,000円


クセの特徴

クセ度合い
弱い  強い
使いやすさ
悪い  良い

これまで紹介してきたレンズの中ではクセという意味では少なめです。ただ、妙なレンズだなと思います。一見暗く地味なレンズ(見た目も含めて)なんですが、入る光の質によっては劇的に美しい描写をします。ヘクトールには妙な魔力があるなといつも思います。

Hektor 135mm f4.5PHOTO BY HM

クセの使いみち

どんなものでも撮れますが、雨上がりのきらきらした光景や、みずみずしいものは非常に美しく撮れるのではないかと思います。また光源の入るショットや夜景など明暗差がある程度ある方が画面にメリハリをもたらすことができます。安価に出回ってますが本当に良いレンズだと思います。そして望遠で撮るのが好きなら長く愛用できるでしょう。


さいごに

ライカのオールドレンズの中でも分かりやすくクセのあるものを選んでみました。初めてライカレンズを使うときにこれらのクセ玉から入るのはオススメかというとちょっと微妙です(なぜなら自分がそうだったから。どうして思い通りに撮れないのか随分悩みました)。

でも他のメーカーのレンズにはもう飽きていて、ライカ特有の変わったレンズが欲しいという人にはとてもオススメです。もちろん、純粋に性能の良いレンズをすでに持っていて2本目、3本目として個性強めのレンズを狙っている方ならぴったりだと思います。

ちょっとやそっとのクセなら使いこなせるぜという方、ライカのクセ玉いかがでしょうか。

X(@soyumn)やってます。
ライカで撮った写真やライカ関連ツイートを日々更新中。

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