ライカ オールドレンズの神レンズ・銘玉を探る

ライカ オールドレンズの神レンズ・銘玉を探る

ライカのオールドレンズの中には神レンズ・銘玉と呼ばれるものがいくつかあります。しかしそれは人によって異なるし、特定の数が決まっているものでもありません。また時代によって、その時々でレンズの評価も変わっています。

ライカの神レンズ・銘玉とはどういう視点で語られているのか、そして今のライカを取り巻く環境で神レンズ・銘玉を決めるならそれは何なのか?ライカの名だたるレンズ群の中から紐解いていこうと思います。

神レンズ・銘玉とは何なのか

「これは銘玉だよ」ライカレンズ好きがあらゆるところで口にするセリフです。そもそもライカのレンズというのはどれも本当に素晴らしいのです。だから決定的に駄目なレンズが存在しないがゆえに、どれもがその人にとって神レンズであり、銘玉になりえます。

では一般的に神レンズ・銘玉を決める要素は何なのか?

これを具体的にするのは何気に難しいのです。オールドレンズの写りにはそもそもテイストや傾向があって好みが分かれます。良いレンズの定義はライカを使う人の数だけ存在する、と私は思っています。

例えば音楽でも名盤と呼ばれるものがあります。とあるバンドの名盤を決めるとします。どのアルバムにも良さがあって絞りにくい。それでも名盤をひとつ取り上げるときの基準は何でしょう?

演奏力?音質?名曲がどれだけ入っているか?

まぁこれも賛否両論あるので一言で言うのは難しいのですが、しかし、あえてひとつ決めるとしたら私は「聴き飽きさせない魅力があること」だと思っています。そして次点で「心を揺さぶる表現があること」です。

「心を揺さぶる表現」は一見最も評価されそうですが、中には人、時代を限定するものや消費的なものも含まれます。だからこそ何度聴いても魅力が発見できる懐の深いアルバムが名盤だと私は思うのです。

神レンズ・銘玉を定義してみる

この考え方をレンズに適用するとどうでしょう。使い飽きさせない魅力が次々と発見できるレンズこそが神レンズである、と言ったところでしょうか。次は「使い飽きさせない魅力」これをもうちょっと具体的にしてみます。

なお、私が考える神レンズ・銘玉のレンズは後で紹介しようと思います。

使いやすく、飽きないレンズ

神レンズ・銘玉と言われるためには使いやすく、飽きないレンズであることが条件にありそうです。

「使いやすい」というのはシーンを選びすぎない、レンズの取り回しが良い、カメラ(ライカ)との相性が良い、などです。「飽きない」というのは個性が強すぎない、地力がある、時代や流行に左右されない、などです。

これらを考慮すると大きすぎるレンズ、重すぎるレンズは対象になりにくく、収差が強すぎるレンズは一時的に神レンズになることもありますが、悪い方向に傾いてしまうと使えないボロ玉認定をくらうこともあることになります。

魅力が次々と発見できるレンズ

レンズの魅力をどれだけ引き出せるか、それは使い手のスキルにかかってきます。

一般的に魅力を多く持つレンズというのは、そもそものポテンシャルが高い、F値によっていろんな表情をみせる、シーンによって抜群にハマることがある、などのレンズです。

私が最も長く使ったレンズのひとつに球面ズミルックス 35mmがありますが、これはボケの魅力があり、絞って遠景で撮っても魅力的で、人を撮るとまた新しい発見があり、近接で撮ると、アンダーで撮ると…と、数多くの側面で魅了された面白いレンズでした。

逆にどのシーンで撮っても何だかパッとしないレンズというのも世にはあります。魅力を多く持つレンズ、それを引き出そうとする撮影者に応えてくれるレンズは名レンズだと思います。

ライカ オールドレンズの神レンズ・銘玉

では数あるライカのオールドレンズの中でこれらの条件に当てはまるレンズはどれなのか。私なりに現在の所感でピックアップしてみました。

Super Angulon 21mm f4

Super Angulon 21mm f4
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Super Angulon 21mm f4のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
4群9枚
マウント
ライカL、ライカM
焦点距離
21mm
F値
4
画角
92°
絞り羽根数
9枚
重量
250g
最短撮影距離
0.4m
フィルター
A42, E39
フード
12502(IWKOO)
製作年
1958-1981
カラー
シルバー
市場価格
約150,000-200,000円


Super Angulon 21mm f4の神レンズ・銘玉ポイント

21mmでは正直被写界深度を利用して、ボケを表現に加えることは少ないです。だからF4で充分。それよりも絞って撮ったときの真実味みたいなものが如何に写真に浮き上がってくるか、これを私は重要視しています。

スーパーアンギュロンは21mmとしては大きすぎないし、地力のあるレンズです。何をとってもそれなりに絵にしてくれる。そういう凄みがこのレンズの評価を後押ししている気がします。見た目が良いのもポイント高いですね。

Super Angulon 21mm f4PHOTO BY John Henderson

Summilux 35mm f1.4 1st (第1世代)

Summilux 35mm f1.4 1st (第1世代)
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Summilux 35mm f1.4 1st (第1世代)のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
5群7枚
マウント
ライカM
焦点距離
35mm
F値
1.4
画角
64°
絞り羽根数
10枚
重量
245g
最短撮影距離
1m
フィルター
E41
フード
12522 (OLLUX)
製作年
1960-1966
カラー
ブラック / シルバー
市場価格
オリジナル 約1,000,000-円


Summilux 35mm f1.4 1st (第1世代)の神レンズ・銘玉ポイント

Summiluxは全体を通して幻想を見せてくれるレンズだと思っています。その厳しく現実を余すところなく見つめるような繊細さと、絞りを開いたときの絶妙な甘さがこのズミルックス35mmの魅力です。普通レンズは固めか柔らかめのどちらかに分かれてしまいそうですが、このレンズはそれが同居しています。

普段何となく自分が見ている視点を大きく飛躍させてくれる、こういうマジックのあるレンズです。そして開放値にしてはとにかく小さくてコンパクトなのも銘玉たる所以でしょう。

Summilux 35mm f1.4 1stPHOTO BY Oboist

Elmarit 28mm f2.8 1st (第1世代)

Elmarit 28mm f2.8 1st (第1世代)
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Elmarit 28mm f2.8 1st (第1世代)のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
6群9枚
マウント
ライカM
焦点距離
28mm
F値
2.8
画角
76°
絞り羽根数
10枚
重量
225g
最短撮影距離
0.7m
フィルター
E48
フード
12501
製作年
1965-1972
カラー
ブラック
市場価格
約300,000-450,000円


Elmarit 28mm f2.8 1st (第1世代)の神レンズ・銘玉ポイント

28mmの写真で重要なのはメリハリだと考えています。背景と被写体のメリハリ。つまりレンズもそのメリハリを上手く表現できるレンズが28mmの神レンズになってくると思います。

このエルマリート28mm f.28 第1世代は物事をしっかりとクリアに捉える力が絶妙です。クリアに捉えるというのは硬いわけでなく抜け感が良いという意味です。ただ抜けが良いレンズもたくさんありますが、このエルマリートは更に程よい柔らかさを備えています。シャープさと柔らかさ、そのメリハリを使いつつ28mmらしい写真を撮れば最高の絵ができる。そういった銘玉だと思います。なお第2世代も同様の傾向があるので、こちらもおすすめです。

Elmarit 28mm f2.8 1stPHOTO BY Takayuki Miki

Summar 50mm f2.0

Summar 50mm f2.0
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Summar 50mm f2.0のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
4群6枚
マウント
ライカL
焦点距離
50mm
F値
2
画角
45°
絞り羽根数
6枚/10枚
重量
160 / 180g
最短撮影距離
1m
フィルター
A36
フード
SOOMP
製作年
1933-1940
カラー
ニッケル / シルバー
市場価格
約50,000-200,000円


Summar 50mm f2.0の神レンズ・銘玉ポイント

ズマールはレンズ光学的にはそんな良いレンズではないのでしょうが、どこか人間臭く、欠点を魅力に変える不思議な力のあるレンズです。ライカオールドレンズの代表のようなレンズですが、意外にも上手く使うのはけっこう難しいと思います。

レンズはキズも付きやすく、下手したら破綻しかねない表現に。しかしそれを加味しても時折見せるアンニュイな絵力は人を惹きつけます。誰もが認める神レンズというよりかは、類まれなる個性で人を魅了して止まない珍妙なレンズかもしれません。

Summar 50mm f2.0PHOTO BY haru__q

Summicron 50mm f2

こちらはもう殿堂入りだと思うので、あえて説明はしませんが。ライカの銘玉中の銘玉ということで、長くこれからも愛されるレンズでしょう。

Tele Elmar 135mm f4

Tele Elmar 135mm f4
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Tele Elmar 135mm f4のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
3群5枚
マウント
ライカM
焦点距離
135mm
F値
4
画角
18°
重量
510g/550g
最短撮影距離
1.5m
フィルター
E39/E46
フード
12575 (IUFOO)/組み込み
製作年
1965-1998
カラー
ブラック
市場価格
約40,000-120,000円


Tele Elmar 135mm f4の神レンズ・銘玉ポイント

このテレエルマー135mmを銘玉とあえて呼ぶ人は少ないかもしれません。しかし135mmの単焦点というレンズの中で、バランス感覚に優れ、Best of 中庸と呼べるような飽きない描写。艷やかな写りは被写体の魅力を引き出します。

もちろん開放値F4と派手さはありませんし、タンバールやヘクトールほどの個性はないにしろ、素晴らしいレンズだと個人的に思っています。シーンを選ばない(といっても135mm単焦点です)のも良いところですね。

Tele Elmar 135mm f4PHOTO BY HM

ライカオールドレンズの銘玉に近いレンズ

この枠組みでちょっと紹介したいのが、フォクトレンダーから2021年に発表されたHeliar classic 50mm f1.5 です。正しく神レンズ・銘玉に必要な要素をすべて兼ね備えたかのようなレンズであり、もちろん新品で買えます。

Heliar classic 50mm f1.5

Heliar classic 50mm f1.5
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Heliar classic 50mm f1.5のレンズ構成図

レンズ種類
単焦点レンズ
レンズ構成
3群6枚
マウント
VMマウント
焦点距離
50mm
F値
1.5
画角
45.9°
絞り羽根数
10枚
重量
255g
最短撮影距離
0.5m
フィルター
49mm
フード
専用ねじ込みフード
製作年
2021
カラー
ブラック
市場価格
約99,000-円


オールドレンズ的テイストの描写スペックは満点、使い勝手は現代風にアレンジされており、取り回しも比較的良いのです。開放F値は1.5ですから、表現の幅があり遊びがいのあるレンズです。

まさにライカ的オールドレンズの銘玉を現代に昇華したようなレンズであり、新品でこれが簡単に手に入るのなら最有力候補として申し分なしではないでしょうか。

神レンズ・銘玉の実力はどれも状態が良いのが前提条件です。物によってはグッドコンディションのものを見つけるのが困難なものもあります。レンズ選びに手間をかけたくない、オールドレンズだからと気を使わずにどんどん使いたい。そういったときに最もオススメなのがこのヘリアークラシック 50mm f.15だと私は思います。

X(@soyumn)やってます。
ライカで撮った写真やライカ関連ツイートを日々更新中。

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