ライカの35mmのレンズの比較とおすすめ

ライカの35mmのレンズの比較とおすすめ

ライカの35mmといえば50mmと並ぶ王道の画角です。ブライトフレームの関係で最も見やすく、また準広角ゆえにスナップもしやすい絶妙な焦点距離。ライカが力を入れて数々の傑作を生み出したこの画角のレンズ達の中で、果たしてどれが最もおすすめなのでしょうか。

時代背景やレンズの個性をふまえつつ、その魅力を探ります。

ライカといえば35mm、その理由は

ライカの35mmのレンズの比較とおすすめPHOTO BY nik gaffney

人によって「標準」となるレンズ画角は異なると思いますが、「ライカといえば35mm」という人も多いと思います。50mmよりもより客観的に写真を撮れる35mmはレンジファインダーとの相性が抜群で、ファインダーをのぞいたときの自然な視界は日常の視線の延長になります。また、ピントも合わせやすくフレーミングも適度に自由度が高いです。

ライカの35mmはエルマー35mmから始まり、数々の名作レンズを生み出してきました。そしてそれらを使って数多の写真家が有名な作品を残しています。それぞれのレンズには多くの逸話がありますが、今現在でもその個性を発揮して使いこなせば先人たちに負けない写真を撮ることも可能です。そんな信頼できる相棒として35mmのレンズを多くの選択肢から自由に選べる今はとても恵まれているのかもしれません。

新しいレンズには新しいレンズなりの機能性と、現代の水準に照らし合わせた十分なスペックがあります。そして古いレンズにはその時代特有の設計思想と、持てる技術を限りなく注いだ熱量のようなものが込められています。これらを同軸で比較して選ぶのは難しいのですが、、レンズのいろんな側面を見ることで、写真にかける自身の想いと繋がるものがきっと見えてくるはずです。

ライカの35mmのレンズの描写傾向

大前提として、ライカの35mmは歪みなく端正に解像しどれも遜色なく非常に良く写ります。それぞれにレンズの個性は多くありながらも、絞ってしまうと正直違いはよく分からなくなります。なので「開放F値での印象」と「作られた時代」の2つがレンズの特徴を示す指針になるといっても過言ではないと思います。

Summicron 35mm f2.0 ASPH.

Summicron 35mm f2.0 ASPH.



沢山あるレンズの中で最もニュートラルなレンズを1本上げる、となると個人的にSummicron 35mm f2.0 ASPH.を上げたいです。35mmにおいて必要十分な開放値と、隙のない完璧な設計で非常に安定している銘レンズです。描写は柔らかくもなく硬くもなく、ズミクロン独特のリアリティにあふれています。35mmという注視しすぎない視点の性格ともズミクロンは相性が良いですね。どんな状況にも対応できる1本を選ぶなら間違いなくこれを選ぶと思います。


Summicron 35mm f2.0 1st (第1世代・8枚玉)

Summicron 35mm f2.0 1st (第1世代・8枚玉)



Summicron 35mm f2.0 ASPH.は現代設計の新しいレンズなので、より描写の味のようなものを求めるという意味ではこの1stのほうが候補になるでしょう。伝説の8枚玉などとよく言われます。確かによく写ります。ただ解像力だけでいうと現代のレンズのほうが高いです。このレンズが評価されるのは「古いわりにはすごく良く写る」という点だと思います。すごく良く写る、しかし現在の基準と照らし合わせて写りすぎていない、そういう稀有なバランス感覚が好まれているのではないかと。ライカレンズの人気ランキングをしたら必ず上位に来るであろうレンズですね。


Summilux 35mm f1.4 1st / 2nd

Summilux 35mm f1.4 1st (第1世代)



Summilux 35mm f1.4 2nd (第2世代)



復刻もされて大人気の超クセ玉。海外ではキング・オブ・ボケとも言われています。もはや語り尽くした感はあるのですが、開放付近での美しい滲みが特徴です。ただしこれは被写体や時間を選びます。快晴時で絞ると若干濁ったような写りになる気もします。このレンズは夕方に撮ると写真の腕が上がったんじゃないかと錯覚するような画が撮れます。使いこなしてやるぜ!と挑戦的な方向けですね。


Summilux 35mm f1.4 ASPH.

Summilux 35mm f1.4 ASPH.



やや大きいことを除けば完璧なレンズです。ズミクロンとは違うベクトルでの強度があり、35mmの中にぐいっとエモーショナルな物語を生み出します。見慣れた風景をありのままに写すのがズミクロンであれば、ズミルックスは見慣れた風景の中に潜む美しさを引き出してくれるレンズです。


Summaron 35mm f2.8

Summaron 35mm f2.8



このレンズ、Summicron 35mm f2.0とひと絞り違うだけで、個人的に描写はとても似ている気がします。そして外観も似ていてライカに詳しくなければ見分けがつかないほど。35mmでF2もいらないよという方にはこちらが非常におすすめです。ズマロンというのは銘玉が多いのでその響きだけで惹かれます。


Summaron 35mm f3.5

Summaron 35mm f3.5



F2.8のズマロンの前身となったF3.5バージョン、通称サンハンズマロンです。Lマウントのこの工芸的な作り込みとコンパクトさがたまらないです。フードつけた姿も良いんですよね。描写はやはり現代のレンズと比べると色乗りコントラストも浅い感じですが、それがオールドらしい個性に繋がっています。どこかノスタルジックな作品作りには一番適しているのではないでしょうか。そしてかなり軽量なのもポイント高いです。


Elmar 3.5cm f3.5

Elmar 3.5cm (35mm) f3.5



普遍的で中庸な、余計な冠をかぶっていない、、エルマーを表現する言葉はたくさんあります。しかしどれも完全に言いえてるかというとそうではなく、説明が難しい、そんなレンズです。どこかに「これでいいんだ」と納得させる凄みがあります。言うまでもなくモノクロ時代のレンズなのでモノクロと相性が良いです。使って分かる良さがそこにあります。


ライカの35mmのレンズの使い勝手

日常的によく使う35mmのレンズだからこそ重要なのが使い勝手です。ここで言う使い勝手には2種類あります。ひとつは機能と機動性の良さから来るもの、もうひとつは描写の傾向から来る被写体との適合性です。出番が多いかどうか、ということですね。

現状で最も機能的と言えるのはAPO Summicron 35mm f2.0 ASPH.、刷新されたSummilux 35mm f1.4 ASPH.です。ライカでこれまでなし得なかった近距離撮影が行えるのが大きいです。

コンパクトで軽量なほうが機動性は上がりますが、Elmar 35mm f3.5のように絞りが前面についていると直感的な操作には向きません。まぁそんなに急いだ撮影をするようなレンズではないですが。またズマロン35mm f3.5のように距離指標がボディに対して水平についているとカメラを傾けて覗き込む必要があります。

描写の方向性としては1980年を境とするいわゆるニュージェネレーションレンズからは現代的なシャープネスが得られるので、それ以降のものであれば基本的に万能選手として活躍が期待できます。Summicron 35mm f2.0 4thなどは長く使えて本当におすすめです。

35mmは他の画角と比べても比較的上手くまとまっているレンズが多いのでどれを選んでも使い勝手で困ることはなさそうです。

ライカの35mmのレンズのデザイン

ライカの鏡胴のデザインとなると、やはり古い時代の作り込みにまさるものはないと思います。一概には言えないですが、現代のレンズよりも造形的に愛でる要素が大きかったのではないかと。そして個人的な好みではありますが、ライカモノクロームにSummaron 35mm f3.5 L+FOOKHなんか最高です。いぶし銀の渋い佇まいが「分かってるなこいつ」感あります。

あとはSummilux 35mm f1.4 ASPH.のフローティングバージョンもフード込みで素晴らしいデザインでした。ライカもカメラの商品画像でよくこのズミルックスをつけてましたね。それくらい現代のライカらしいバランスの取れたプロポーションだったと思います。

それとニッケルのエルマー35mmなんかはオールド感満載で、現代の精密なテクノロジーの集合体であるボディの上に古典的な光学レンズがついている様は筆舌に尽くしがたい一種の感動さえあります。

ライカの35mmのレンズの価格

描写と価格のバランスでコスパを考えると筆頭に上がるのはSummaron 35mm f3.5です。現代でも通用するライカらしい奥ゆかしい描写ながら、製造数がそれなりにあるせいかライカのレンズの中では最も安い部類に入ります。

ズミクロンは6枚玉、7枚玉が狙い目です。クセの少なさから飽きずに長く使えるでしょう。逆に8枚玉は高騰してますが、値段に見合った特別な描写が得られるのか…というのは言わずもがな。

まとまった額を出すのであればSummilux 35mm f1.4 ASPH.を買うと幸せになれるかもしれません。

ライカの35mmのレンズのおすすめポイント

いくつか象徴的なレンズを選び4つのポイントを5段階で表しました。(※個人の見解です)

レンズ/ポイント 描写 使い勝手 デザイン 価格 総数
Summilux 35mm f1.4 1st 4 4 4 2 14
Summilux 35mm f1.4 ASPH. 5 4 4 2 15
Summicron 35mm f2.0 1st 4 4 4 2 14
Summicron 35mm f2.0 ASPH. 5 4 4 3 16
APO Summicron 35mm f2.0 ASPH. 5 5 4 1 15
Summarit 35mm f2.4 ASPH. 4 4 4 3 15
Summaron 35mm f2.8 4 4 4 3 15
Summaron 35mm f3.5 4 3 5 5 17
Elmar 3.5cm f3.5 3 3 4 4 14

最新レンズの良さとオールドの良さが甲乙つけ難く、かなり接戦になりました。35mmレンズはどれも使い勝手が良く、好みの要素が多いと思います。オールドレンズは独特な描写の良さが目を引くものの、オールマイティに撮れる現代のレンズが一歩有利かと。

まぁハズレのない画角なので、撮りたい写真のテイストとお財布と相談しながら総合的に選ぶのが吉です。そしてズマロンはf2.8も3.5も35mmの最初の一本としておすすめです。

ライカの35mmのレンズの総評

それぞれのレンズを端的にまとめてみます。

ボケを楽しみたい&軽量派なら球面ズミルックス

現代的なシャープとまろやかなボケならズミルックスASPH.

キレ&近接、1本で何でも撮れるレンズならアポズミクロン

絶妙な塩梅のオールドレンズならズミクロン初代

最高のニュートラルさを得たいならズミクロンASPH.

コンパクト&軽量&シャープネスならズマリット

素晴らしい画作りで写真表現したいならズマロン

スペックに左右されずに写真に集中したいならエルマー

100人いれば100通りの解釈がありそうですが、個人的におすすめポイントはこんな感じでしょうか。ライカの恐ろしいところはレンズに優劣がないんですよね。それぞれオンリーワンなので35mmレンズ1本買えば終了ではなく、じゃああっちはどうなんだろう、こっちは、、と試したくなるんです。そしてレンズの良さって長く使うと変わる&分かってくるんですよね。人と一緒で、初見では見えなかった部分がじっくり付き合うと見えてくる、そんな楽しみがレンズにもあります。

ぜひ気になったレンズから使ってみて、使いこなせるようになったらまた気分転換に他のレンズも試してみて下さい。F値がすべてではなく、暗いレンズだからこそ新しい発見もあったりします。いつまで経っても飽きない画角、それがライカの35mmだと私は思います。

ちなみにライカ以外にも35mmの候補はあります。

Biogon 35mm f2

Nokton 35mm f1.2 Aspherical

Nokton Classic 35mm f1.4

Ultron vintage line 35mm f1.7 Aspherical

Ultron vintage line 35mm f2

Apo-Lanthar 35mm f2

こっちにも魅力的なレンズが山程、、沼ですね。明るいレンズでもライカより比較的手に入れやすいので、ボケを多用する表現なら試してみる価値は大いにあります。

ライカ35mmのファインダー

ライツ時代の3.5cm(35mm) の光学ファインダー、SBLOOがあります。

12010 (SBLOO)



ライカ35mmレンズの中古情報



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