はじめてのオールドレンズ。基本からその魅力、おすすめまで紹介。
現代のレンズと異なりその個性的な描写からオールドレンズが人気です。すっかり市民権を得たオールドレンズの世界ですが、今更聞けないオールドレンズの基礎やオールドレンズだからこそ撮れる魅力を深堀りしてきます。またオールドレンズの中で特におすすめのものも紹介していきます。
CONTENTS
オールドレンズとは?
PHOTO BY Mike Maguire
オールドレンズの定義は実は曖昧で、いろんな切り口で紹介されています。その中でもよくあるのが下記2つ。
- 1970年以前のレンズ
- フィルムカメラのために作られたレンズ
ライカに関していうと、鏡胴を美しく作り込んだまるで金属工芸のようなデザインで、描写に個体差があったのがライカ初期のレンズで、「ザ・オールドレンズ」ともいえます。
そこから1970年、1980年頃までカナダでも作られ、ときにコストダウンしながらも工業的な生産に移っていったのが第二世代のレンズ。
そして1980年頃から画一的でシステマチックな見た目、性能重視のレンズへと変化したレンズは「ニュージェネレーション」と呼ばれます。
ニュージェネレーションも今となってはかなり古参レンズではあるのですが、独特の趣がある1980年頃までの第二世代まではよくオールドレンズと認識されています。よって1980年頃までのレンズをオールドレンズと呼んでも良いのかもしれません。
なおライカはデジタルへの進出が遅く、デジタルM型ライカに至ってはM8の登場が2006年まで待たなければいけませんでした。そういう意味では2006年までのレンズはフィルム用に設計されているため、フィルム時代のオールドレンズとも言えます。
オールドレンズといえばライカ
ライカの歴史は長く、今の35mm判(フルサイズ)を作ったのもライカです。初期から驚くべき性能のレンズを生み出し、その外観の作り込みも一級品でした。
オールドレンズに注目するならライカは外せませんね。むしろライカのレンズの歴史を追うことで、オールドレンズの大きな流れも理解できるかもしれません。
オールドレンズの魅力と選ぶ理由
人はなぜオールドレンズに惹かれるのでしょうか。オールドレンズの魅力を思いつく限り紐解いてみます。
- レンズの作りが良い
- 工芸品のような佇まい
- マニュアルで撮る楽しさがある
- ラインナップが多い
- レアもの、限定ものを探す楽しみも
- 当時の高級レンズが安く買える
- 単焦点なので画質が良い
- 個性が強い
- レトロな写真が撮りやすい(フレア、周辺減光など)
- デジタルなのに温かみがある
- 自己表現しやすい
まず見た目の要素として、意匠を凝らした金属加工のレンズデザインが目を引きます。現代の似たりよったりなデザインよりもオンリーワンであることが所有欲を掻き立てます。特に沈胴レンズなんかはその外観だけで手に入れたくなります。
撮影体験としては、いまマニュアルで撮るのが逆に新鮮だと言われます。オートフォーカスだと便利な反面、自分で撮っている感覚が薄いです。自分で設定を選んで撮影する体験行為、そしてマインドフルネスとしての自覚的な要素も注目されています。
価格の面としては、当時高価だったレンズが安く買えるというのも見逃せません。ライカの現行レンズは高価格帯で更に高騰することも多いので、安価に高いレベルのレンズを買えるのは大きなメリットです。
表現に関しては、オールドレンズは描写の個性が強いので自己表現しやすいというのがあります。完成度が高くなるもののやや無機質になっていく現代のレンズと比べると、温かみがあってレトロな写真になるオールドレンズはラフな撮影に向いているのが選ばれる理由です。
この見た目の印象、撮影体験、価格面、写真表現の4つの側面でオールドレンズは魅力があり、いまあえて選ばれる理由になっているのではないでしょうか。
オールドレンズの操作方法
ライカユーザーであれば言うまでもないですが、オールドレンズはマニュアル操作です。操作方法としては単純で、絞りを選んで、フォーカシングをしてシャッターを切る。これだけです。絞りはボケの表現、ピントは自分が見ている視点であり、両方とも自分で選ぶことで写真に主体性が生まれます。
絞りリングを回してF値を選ぶ
絞りリングはクリック感のある固定値もの、スムーズに動いて自由に選べるものなどあります。写真をぼかしたいのか、隅々までピントを合わせたいのか、表現に合わせてF値を選びます。
オートフォーカスではなく自分でピントを合わせる
どこにピントを合わせたいのか、自分で考えてピントリングを回してピントを合わせます。オートフォーカスになれていると初めは戸惑いますが、ゆっくり確実に合わせましょう。この合わせる時間もマニュアルレンズの楽しみだと思えるとなお良しです。
オールドレンズの付け方
オールドレンズを付ける方法はレンズの仕組みを理解すれば単純です。それぞれのメーカーのレンズにはカメラまでの距離(フランジバックといいます)が決まっています。ミラーレスカメラやライカのレンズは短め、ニコンなどは長めです。つまり短いレンズが付くカメラに長いレンズをつける場合、レンズを離して付ける必要があるのでレンズとカメラの間にかさ増しをします。これがマウントアダプターです。
基本的にはカメラ側のマウントと、つけるレンズのマウントを調べれば該当のマウントアダプターが出てきます。下記で簡単に選べます。
オールドレンズの作例
ライカのオールドレンズで撮った写真です。古いものだと80年ほど前のレンズですが、独特の趣が感じられます。
オールドレンズ一覧
最初に触れたオールドレンズの定義に沿って、ライカレンズの中でオールドレンズにあたるものを一覧にしました。年代順に並べているのでレンズの歴史にもなっています。
オールドレンズの楽しみ方
オールドレンズの楽しみ方は人それぞれ、そして興味次第では無限に広がります。まずは好みのオールドレンズを見つけて、いろいろ撮ってみましょう。するとレンズの特性が見えてきます。レンズの欠点も、オールドレンズの場合は魅力に繋がります。その欠点をどうしたら写真に活かせるか、考えてみるのも面白いです。
オールドレンズを扱う店へ行っていろいろみてみる
レンズのデザイン、スペック、作例で探す
良い状態のものを探して買う
これはネットが有利ですね。独自のキャンペーンが充実しているYahoo!ショッピングをおすすめしています。
レンズとアクセサリーの組み合わせ
どのフードをつけるか。ファインダーはどうするか。それもオールドレンズの楽しみです。
SNSで同じレンズを持っている人を探そう
同じレンズを使っている人を探して繋がれるのも今ならではの楽しみ方です。
オールドレンズのデメリット
現代のレンズと違ってオールドレンズにはいろんな制限やデメリットもあります。
- 逆光に弱い、フレアが出やすい
- 動きの速いものには向いていない(野鳥、レーシング、スポーツなど)
- 状態の悪いものがあるので見極めが必要
これをどう捉えるかですが、制限があるからこそ楽しめることも多いです。欠点を個性と捉えて活かしたり、あえて向いていない被写体を撮ることで新しい写真を目指しても面白いです。
奥の深いオールドレンズの世界
オールドレンズはただ同じメーカーのものを付けて撮るだけではありません。工夫しだいで七色の遊び方ができ、その表現方法も多彩です。例えば
- 他メーカーの過去のレンズがつけられる
- レンズを改造して使う
- シネレンズやプロジェクターレンズをつける
など、様々な方法があります。下記では更に奥深いオールドレンズの世界についてふれています。
オールドレンズの買い方
オールドレンズは現行のレンズと違って、メーカー直営の店では買えません。レンズ中古店やネットを通じて購入する必要があります。
スペックや作例をひたすら比較して選ぶ
まずはレンズを特徴をおさえて、作例を見て、好みのレンズを選びます。
欲しいレンズが決まったら店舗やネットで探すことになりますが、中古店は都市部に集中しており、また複数の状態のものから選ぶのは困難です。その点ネットは入れ替わりも激しいため好みの状態、価格のものを探すのに向いています。
経験上お得に買いやすいのはYahoo!ショッピングです。かなり頻繁に割引クーポンを配っているので最安で手に入れられることが多いです。
なお、購入する際の注意点、見るべきところなどは下記を参考にしてください。
ちなみにメルカリ、ヤフオクはオールドレンズ初心者の場合おすすめしずらいです。レンズの状態は主観で記載されているので、劣化品をつかまされて思ったような描写が得られなかったりします(むしろその劣った描写を本来の描写だと思ってしまうこともあります)。
そもそもレンズの状態の見方が分からないと、商品説明とは異なる粗悪な状態のものであることも分からなかったり。私も過去よく失敗し、整備に出したら修理費が高くついて初めからネット店で買えばよかったと後悔したことがあります。初めから納得できるものを買うのが近道ですね。
オールドレンズのおすすめ
さいごにライカのレンズの中でオールドレンズを始めるなら手にとってもらいたい、おすすめのオールドレンズを5つ紹介します。
Summar 50mm f2.0
PHOTO BY haru__q
PHOTO BY haru__q
- レンズ種類
- 単焦点レンズ
- レンズ構成
- 4群6枚
- マウント
- ライカL
- 焦点距離
- 50mm
- F値
- 2
- 画角
- 45°
- 絞り羽根数
- 6枚/10枚
- 重量
- 160 / 180g
- 最短撮影距離
- 1m
- フィルター
- A36
- フード
- SOOMP
- 製作年
- 1933-1940
- カラー
- ニッケル / シルバー
- 市場価格
- 約50,000-200,000円
こちらも人気のレンズ、ズマール。叙情的な雰囲気を出すならこのズマールの得意分野です。あえていうとライカらしい軟調がこのレンズの魅力でもあります。
Summar 50mm f2.0の特徴
- クセ度合い
- 弱い 強い
- 使い勝手
- 悪い 良い
- 価格
- 安い 高い
- かっこよさ
- 悪い 良い
Summarit 50mm f1.5
PHOTO BY J
PHOTO BY J
- レンズ種類
- 単焦点レンズ
- レンズ構成
- 5群7枚
- マウント
- ライカM、ライカL
- 焦点距離
- 50mm
- F値
- 1.5
- 画角
- 45°
- 絞り羽根数
- 16枚
- 重量
- 320g
- 最短撮影距離
- 1m
- フィルター
- E41
- フード
- 12520 (XOONS)
- 製作年
- 1949-1960
- カラー
- シルバー
- 市場価格
- 約80,000-200,000円
ライカの中でも有名なクセ玉ズマリット。ちょっとソフトな味付けで上手く光を入れるとハイライトが滲んだりとオールドレンズらしい描写が得られます。
Summarit 50mm f1.5の特徴
- クセ度合い
- 弱い 強い
- 使い勝手
- 悪い 良い
- 価格
- 安い 高い
- かっこよさ
- 悪い 良い
Elmar 3.5cm f3.5
PHOTO BY melquiades1898
PHOTO BY Carlos Ebert
- レンズ種類
- 単焦点レンズ
- レンズ構成
- 3群4枚
- マウント
- ライカL
- 焦点距離
- 35mm
- F値
- 3.5、4.5、6.3、9、12.5、18
- 画角
- 64°
- 絞り羽根数
- 6枚
- 重量
- 112g
- 最短撮影距離
- 1m
- フィルター
- A36
- フード
- 12505 (FOOKH), FLQOO, 12510 (FISON), 12530 (FIKUS), 12571 (IROOA)
- 製作年
- 1930-1950
- カラー
- ニッケル / シルバー
- 市場価格
- 約50,000-100,000円
ライカの中で最初に作られた広角レンズです。小さなレンズながらも卒のないライカらしい丁寧な描写で、時代を超えて愛されるレンズ。
Elmar 3.5cm f3.5の特徴
- クセ度合い
- 弱い 強い
- 使い勝手
- 悪い 良い
- 価格
- 安い 高い
- かっこよさ
- 悪い 良い
Elmarit 28mm f2.8 2nd (第2世代)
PHOTO BY HolyWhiteShirt
PHOTO BY Osamu Kaneko
- レンズ種類
- 単焦点レンズ
- レンズ構成
- 6群8枚
- マウント
- ライカM
- 焦点距離
- 28mm
- F値
- 2.8
- 画角
- 76°
- 絞り羽根数
- 8枚
- 重量
- 235g
- 最短撮影距離
- 0.7m
- フィルター
- E48
- フード
- 12501
- 製作年
- 1972-1979
- カラー
- ブラック
- 市場価格
- 約150,000-350,000円
質感の表現が非常に高く、少し絞って中距離から遠距離で撮影すると真価を発揮するレンズ。どこか湿潤な柔らかさを感じられる1本。
Elmarit 28mm f2.8 2nd (第2世代)の特徴
- クセ度合い
- 弱い 強い
- 使い勝手
- 悪い 良い
- 価格
- 安い 高い
- かっこよさ
- 悪い 良い
Super Angulon 21mm f3.4
PHOTO BY HM
PHOTO BY HM
- レンズ種類
- 単焦点レンズ
- レンズ構成
- 4群8枚
- マウント
- ライカL、ライカM
- 焦点距離
- 21mm
- F値
- 3.4
- 画角
- 92°
- 絞り羽根数
- 4枚
- 重量
- 300g
- 最短撮影距離
- 0.4m
- フィルター
- シリーズ7, E48
- フード
- 12501
- 製作年
- 1963-1980
- カラー
- ブラック / シルバー
- 市場価格
- 約150,000-200,000円
数あるライカレンズの中で一際有名かつ評価も高い21mmの超広角レンズ。描写が素晴らしいのはもちろん、鏡胴が一度くびれて広がる形が非常に美しく、12501フードをつけた姿はライカの中でも随一のカッコ良さ。
Super Angulon 21mm f3.4の特徴
- クセ度合い
- 弱い 強い
- 使い勝手
- 悪い 良い
- 価格
- 安い 高い
- かっこよさ
- 悪い 良い
X(@soyumn)やってます。
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