レンジファインダーの仕組みと撮影

レンジファインダーの仕組みと撮影

ここではレンジファインダーという機構とその特徴について解説していきます。ライカ以外にも様々なレンジファインダーカメラが存在しますが、ここではライカに絞って説明をしていきます。

レンジファインダーとは

距離計の仕組みと二重像

レンジファインダーとは距離計というものを搭載した機器のことを指し、レンジファインダーカメラ全般のことを指すこともあります。ライカ以外にもレンジファインダーカメラは存在しますが、現在主なレンジファインダーカメラというとライカがまずあがってくるかと思います。一般的な距離計の歴史や細かな仕組みはここでは割愛しますが、レンジファインダーの距離計についてやレンジファインダーの仕組み、またライカの特徴などをここで紹介していきます。

レンジファインダーと一眼レフとの違い

一眼レフでは撮影するレンズに入った光をミラーとプリズムを使って屈折させ、ファインダーの中に写します。ファインダー内に見えている像は実際にレンズを通った光の像であり、見えているものと実際の写真として写すものは同じということになります。ピントの調整はこの像を見ながら行うため、実際にピントの合う部分とそうでない部分もファインダー内で確認ができます。一方レンジファインダーではレンズに入った像をファインダーで見るのではなく、別に距離計というものを通した像をファインダーで確認します。ピントの調整もこの距離計が写す像を使って合わすため、写真に写すレンズの光の像は見ずに、撮影時は常に風景そのものを見ていることになります。

距離計の仕組みと二重像

距離計の仕組みと二重像

M型ライカのカメラの正面を見ると透明の窓が2つ左右についています。これが距離計窓で、この左右の窓から入った光の像をファインダー内に写し込み、ピントリングを調整することでそれぞれの像を合致させてピントを合わせる仕組みとなっています。

これは人間の目に例えると分かりやすいかもしれません。人は左右の目にそれぞれ入った像を上手く組み合わせて焦点を合わせています。レンジファインダーもそれぞれの窓に入った像をファインダー内中央の小さい四角形の中でズレを合わせてピントを合わせます。なおレンズの焦点距離によってファインダーの中に3タイプの枠が現れます。これは実際にそのレンズでシャッターを切ったときに写真に写る範囲で、ブライトフレームと呼ばれています。このブライトフレームはM9以前だと距離計窓の真ん中にあるスリット上の窓から採光をして表示され、M(Typ240)以降ではLED表示となっています。

レンジファインダーのメリット・デメリット

一眼レフとは大きく異なるレンジファインダーの仕組みですが、レンジファインダーで撮影することにはメリットとデメリットがそれぞれあります。

メリット

  • 写真に写る範囲の外側もファインダーで確認ができる
  • どこでもピントがあった状態で視界を確認できる
  • シャッターを押した瞬間も視界が見える
  • シャッターショックが少なくシャッター音も静か
  • いつでもシャッターを素早く切ることができる
  • 構造上カメラが小さい

それぞれ順に解説をしていきますね。

写真に写る範囲の外側もファインダーで確認ができる

ファインダー内には写真として切り取る枠(ブライトフレーム)がありますが、ブライトフレームの外側もファインダーには見えています。一眼レフではファインダーをのぞいている間はレンズに写っている視界しか見えないのですが、レンジファインダーの場合は切り取る外側も見えていることになります。つまり写真を写す際に外側の部分を考慮しながらフレーミングができ、切り取る部分を選択するかのように構図を決めることができるのでとても便利です。

どこでもピントがあった状態で視界を確認できる

一眼レフではピントの合っていない部分はファインダー内でもボケてしまう一方、レンジファインダーでは現実の世界をそのまま見ているため、パンフォーカス、つまりすべての部分にピントがあったような形で視界を確認することができます。

シャッターを押した瞬間も視界が見える

レンジファインダーでは一眼レフのようにシャッターを切った瞬間ブラックアウトすることはありません。レンズを通る光とは別の像をファインダーで見ているため、撮った瞬間までも目で見ることができます。そのためシャッターを切った瞬間に何かが起こった場合、それも分かるのが利点です。

シャッターショックが少なくシャッター音も静か

一眼レフではシャッターを切るとミラーが動くためシャッターショックが発生します。レンジファインダーの場合はそのような構造がないためシャッターショックが少なく、長めのシャッタースピードでも手持ちで撮影できる利点があります。またシャッター音もコトッ、カシュンッ、といった感じでささやかなため、音が響いたり気になるような場所でも撮影しやすくなっています。

いつでもシャッターを素早く切ることができる

オートフォーカスのカメラの場合、フォーカスがすぐに定まらず決定的な瞬間を逃してしまうことがときどきあります。レンジファインダーではすべてマニュアルフォーカスになり、ピントの位置を目測で決めることが可能です。被写体までの距離をおおよそで捉え、撮影までにピントリングを回しておくと、いつでもシャッターを切ることができますので素早く撮影チャンスを捉える必要があるときなどはとても重宝します。またこのときにf値をf8などにしておくと被写界深度も深くなり、ピンボケになりにくいです。

構造上カメラが小さい

一眼レフではレンズに入った光をファインダーに届けるためにボディ中央にミラーを設ける必要があり、どうしてもある一定以下のサイズにすることが難しくなりますが、レンジファインダーではこのような構造ではないために一般的に一眼レフよりも小さいボディサイズとなります。

続いてはデメリットです。

デメリット

  • 見ている像と実際に写る像にズレがある
  • マニュアルフォーカス一択になる
  • 最短撮影距離が長い(あまり近寄れない)
  • 望遠側になるとピント合わせが難しくなる

見ている像と実際に写る像にズレがある

ファインダーで確認する像と実際に撮影する像が異なるため、パララックス(視差)というものが発生します。これはデジタルのM型ライカであれば自動補正機能が付いているので安心ですが、古いレンジファインダー等ではこれを考慮しながら撮影する必要がありました。ライカの場合フレーミングはどこかアバウトになるため、あくまで目安として確認するという形になります。

マニュアルフォーカス一択になる

現代の一眼レフのように様々なフォーカス機能がついていないので撮影者の手腕を問われます。特に動いているものを小さいf値でボケを活かして撮る、となるとなかなか難しくなりますので、f8等にして被写界深度を深くする等の工夫が必要になってきます。

最短撮影距離が長い(あまり近寄れない)

レンジファインダーはその構造上、レンズ毎に最短撮影距離が決められており、70cm~1mのものが多くなります。マクロアダプターや専用レンズを使うことで被写体に寄った表現も出来ますが基本的にあまり得意ではありません。ここは一眼レフやコンパクトデジカメとの大きな差かもしれません。

補足としてライブビューの出来るモデルの場合「ライカ Mマウント OUFRO 接写リング」を使えば最短20cmほどで撮影出来るようです。

また最新のM/TLレンズ等にはElpro52クローズアップレンズを使うと近接撮影が出来ます。またマクロエルマー90mmというマクロレンズがありますのでこちらであれば被写体に寄った表現も可能です。



望遠側になるとピント合わせが難しくなる

M型のライカレンズでは基本的に焦点距離が135mmまでのラインナップとなっています。望遠側の135mmのレンズの場合、ファインダー内で確認できる像のうち撮影される部分がとても小さくなり、また被写界深度も浅くなるため距離計を使ったピント調整の精度を高く求められます。そのような理由からこれまでは望遠側はあまり人気のない画角でしたが、M(Typ240)からライブビューが搭載され、ピントの精度を高めることができるようになってやや解決されたように思います。

このように一眼レフとレンジファインダーでは、撮影方法やスタイル、また撮影しやすい対象に関わる大きな違いがあります。それぞれに良さがありどちらがより優れているというわけではないのですが、M型ライカではこのレンジファインダーの得意とするところやその良さを上手く取り入れて撮影するのが適しているように思います。

レンジファインダーの魅力

レンジファインダーの魅力

あらためてレンジファインダーの魅力について考えると、やはり普段見ているままに写真を撮ることができるというところでしょうか。一眼レフの場合はカメラを通した世界を見て、その一瞬を取り込むのに対し、レンジファインダーの場合は肉眼で見た世界の延長線上にカメラを置いて、その視界の一部分を選択しカメラに収める、といった意味合いに近いように思います。

自分の興味に合わせてカメラを向け、収めるという行為の連続なので、見たままに、感じたままにシャッターを切れるのはとてもテンポが良くリズミカルな身体性を伴います。カメラ自体も同性能程度の一眼レフと比べるとコンパクトなので携帯性も良く、操作方法もシンプルなので集中しながら撮影することができます。カメラの操作に慣れると身体の延長線上で撮れるようになってきますので、まるでスポーツのようと例えられることもあります。

以上がレンジファインダーの特性であり魅力だと思うのですが、使いこなすにはある程度の慣れも必要です。一眼レフに慣れている方からすると最初は戸惑うかもしれませんし、人によって撮影のし易さや感覚も変わってきますので、まずは一度手にとってみて体感してみるのはいかがでしょうか。

レンジファインダーのピント調整のコツ

レンジファインダーのピントの合わせ方やピント調整のコツに関しては下記に詳しくまとめています。

レンジファインダーはどちらの目で見るか

レンジファインダーはどちらの目で見るのが適切なのでしょうか?これは結論から言うとライカは右目でファインダーをのぞくように出来ています。人によっては利き目が左目の人もいるかもしれません。しかしレンジファインダーのメリットである「外部を確認しながら撮影できる」という点を取り入れるのであれば右目でのぞけるように訓練したほうが良いかもしれません。

レンジファインダーのパララックス

パララックス(視差)とはあまり聞き慣れない言葉ですが、ファインダーで切り取った像と実際に写真に写る像にズレが起こることをいいます。どうしてこういったことが起こるかというと、レンジファインダーの場合はのぞいているファインダーと光の入るレンズの位置が異なります。よってファインダー内で見たままに写るのではなく近い位置にあるレンズが捉えた像が写るため、少しの角度のズレが生じるのです。

M型ライカではパララックス(視差)を自動で補正する機能が付いています。ピントリングを回すと自動的に撮影範囲を示すブライトフレームが少しづつ動きます。(横方向:望遠→近接に回すと、右下方向へ動く) しかしあまりにも撮影距離が短いときはこれで補えず、撮ったと思ったところとはずれた場所が写ってしまうことがあります。もし近接のものを調整する場合は横方向であれば左上へ少し動かすと良いでしょう。 ちなみに電子ビューファインダー(EVFとも言います)は実際にレンズに取り入れる像を電子的にファインダーに写しているのでパララックスがなく、見たままを撮影できますので便利です。

レンジファインダーのコサイン誤差

コサイン誤差とはこちらもあまり聞き慣れない言葉ですが、簡単に説明をすると、ピントを合わせた後にカメラの向きを変えることで、ピント位置が本来の予定している位置からずれてしまい、甘く写ってしまうことです。ピント面というのはセンサーと平行に走っていますので、画面中央でピントを合わせた後にカメラを傾けると被写体が結果的に手前にずれることになり、後ピン(想定していたところより後方にピントが来ている状態)となってしまいます。そしてピント面が浅い場合は特にピンぼけの部分が気になってしまうことになります。このようなことが起こりやすい条件は「広角レンズ+開放+近接」のときです。
このようなコサイン誤差の補正方法としてはいくつかあります。

  • 絞りを絞る
  • 後ピンを考慮して少し手前方向にピントリングを回す
  • 距離を平行に保って平面移動する

仕組みを理解すれば簡単なことではありますが、絞り以外は少し面倒でもあります。コサイン誤差自体は微々たる差ではありますので、厳密なポートレートなど以外ではあまり気にしなくても良いかもしれません。そしてそもそも自分自身が動いてしまうこともありますのであまり気にせず撮影に集中したほうが良いのではという考えに私は至っています。

さいごに

レンジファインダーの仕組みや特徴について解説をしてきましたが、レンジファインダーを使いこなすためには下記が大切ではないかと思っています。

レンジファインダーの仕組みを知る

レンジファンダーの撮影方法を知る

何度も実践をして操作に慣れる

カメラはあくまで写真を撮る道具です。ですのでカメラに使われるのではなく、カメラを使いこなして思ったように写真を撮れるようになることが重要です。ライカはシンプルな操作性を持っていますが、簡単なようで難しく、プロフェッショナルに上手く使いこなすには相当の訓練も必要です。ときどきあらためてレンジファインダーの仕組みを振り返ることで、更にライカに慣れ親しんで頂けると何よりだと思っています。

X(@soyumn)やってます。
ライカで撮った写真やライカ関連ツイートを日々更新中。

オススメ



GOOPASS

おすすめ写真本

新着記事

→最新記事をもっと見る



初めてのライカ

ライカMマウントレンズ

良く読まれている記事

合わせて読みたい

LEICA SHOOTINGライカで撮影

ライカ初心者向けカメラ講座

ライカの撮影方法(理論編)

ライカの撮影方法(実践編)



マウントアダプター簡単検索ツール