ライカはモテるのか、モテないのか

ライカはモテるのか、モテないのか

実にくだらない話題だがちょっと見てやるかと記事を開いた方には申し訳ない。至極真面目な話をするつもりだ。モテという一見安直で俗っぽくも思える視点が、けっこう人の本質をついている、もしくは人の基底を支えていることはよくある。

ライカというブランドの扱われ方には様々な側面がある。それが時代によって変化しているということについて、モテという視点から考えていこうと思う。

ライカにおけるモテとは

ライカはモテるのか、モテないのか

ライカはそもそもモテor非モテ的な思考の外にある花形のカメラだった。まっとうに写真を撮るためだけのツールだった。ライカでしか物理的に撮れない、表現できない、そういう時代があったと思う。ライカが作ったカメラによって、それまで撮れなかったものが撮れるようになり、写真表現が豊かになっていった。

しかし今はカメラで撮れないものはない時代になった。むしろライカでは撮りにくい被写体が増えた。そして言うまでもなくライカは高額だ。高額なのに万能ではなく、制約が多い。

ファッションとしてのライカと、モテ、非モテ

しかしあえてライカを選ぶ人がいる。しかもその中にはファッションの1要素として自分を表現するためにライカを選ぶ人がいる。インフルエンサー的な立場の人間やアイドルが、自分自身が本気であることを証明するためのツールとしてライカを使い箔をつけようとする。

つまりライカをカメラにおける上位機種という設定にし、外界に自己の優位性を形成するための道具として利用する人がいる。一方ライカの性質を熟知しながらも、自分はその機構の洗練さを理解できるんだという内的な優位性で趣味を高尚化させる人もいる。前者をモテ系、後者を非モテ系とする。

モテ系は高級時計や高級車と同じように、機能としての差別化はそれほどなくともステータスとして「機能」する、という自己ブランディングのための買いだ。

一方非モテは、憧れの対象を非常にニッチに分析し、写真そのものではなく多くは「ライカ的であること」に注意を向けて語ってきた。これは高額な費用を払ったのだからむしろそれくらい語らなければ取り戻せない、という意識もあったのかもしれない。

ちなみにこれらを知的エンターテインメントとして、ときに面白おかしく仕上げたのが田中長徳さんだったと思う。


外か内か。どちらにせよ、ライカは自己承認としての「モテ」の軸で機能することが土台にある、というのは否定できないと思っている。

そして問題はその土台の上に何が乗っているのか、ということだ。

ライカという閉鎖的空間

これまでは一部の熱狂的なオタク的思考の写真撮影家・アマチュア写真家が専門性で外堀を埋めることで、外部からは参入しづらい文化を作り、限定的な優位性を持ちえていたと思う。そしてカメラ属性に階級を作ることで自意識を補完するような形でライカを引用していた。

しかしこの特殊なマウントを取る時代はすでに終わっている。なぜならすべての物事はインスタントにすぐ共有され、情報の肩書よりも体験したこと、成し遂げたことそのものにスポットがあたる時代になっているからだ。

つまりライカで真に写真を追求することを宣言し、実際良い写真を撮ることに成功した人だけがライカ的な意味を持つ、と言い換えても良いかもしれない。

ライカかライカでないか

「ライカかライカでないか」という二元論は、まさにこの当事者側からの強制的な世界の矮小化でもあり、幻想を演出するためだけの論法でもあった。しかしこうやって無理やり神格化させた時代は終わり、安易な「モテ」軸は消え去っていく。ではモテor非モテの概念がない昔のライカに戻るのかというとそれとも違う。「写真を撮れること」の特権性なんてものはもうとっくに無い。写真における高い解像度は現代絵画における高い写実性くらいの話でしかない。

これから我々はライカでどうすべきか

だから我々はライカを良い道具として割り切って良い写真を撮るか、もしくは写真について創造的に思考するスタンスを取るしかない。そしてあえていまライカで写真を撮る、という内的体験をひたすら高めていくしかないのだ。

ライカは素晴らしい。と言い切れる側面を私は大いに肯定しているし、否定する気もない。そして特権的でなく誰にでも開かれていることをこのサイトでは以前から伝えている。

元来本質的な価値や意味、などというものは時代によってころころ変わるし、それだけが人間を人間たらしめる重要なものではない。共感から文化というものは生まれ、それがどう作用するのか、時代を考える材料になっていく。写真はいまどこにいるのか、どうなっていくのか。

これからライカを選ぶということは、以前に増してより特殊になっていくだろう。ライカがこの特殊性を今後どのようにデザインしていくのかはわからない。しかしこの揺れ動く状況をリアルタイムで体感したいのならライカは良い思考ツールになるだろう。

X(@soyumn)やってます。
ライカで撮った写真やライカ関連ツイートを日々更新中。

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