エルマー(elmar)135mmの冒険 【ビゾフレックスの活用法】
いきなりですが、M型ライカの中で135mmの望遠レンズはけっこう悩ましいものがあります。というのもM型ボディにレンズをつけると微妙に長く、そして距離計でのピント合わせも決して合わせやすいとは言えないものだからです。そこで、このサイズ感とピント合わせの問題をどうにかクリアできれば積極的に使いたくなるのではと思い、いろいろ工夫をしてみましたのでちょっと紹介します。
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ライカ135mmレンズの外観
M10につけたHektor135mm f4.5。描写は良いのですが見た目としてかなり間延びしたような印象の組み合わせ。Hektor135mm自体はは凄く良いレンズなのですが、、、防湿庫の奥に鎮座されておりました。
ライカ135mmレンズのラインナップ
まず135mmのレンズは現在5本のラインナップがあります。Hektor135mm f4.5、Elmar 135mm f4、Tele-Elmar 135mm f4、Elmarit 135mm f2.8、Apo-Telyt 135mm f3.4 ASPH.。どれも描写は素晴らしいです。
それぞれの個人的な印象としては、ヘクトールは繊細で不安定さも抱える美しい描写、エルマーはオールドさも抱えつつ端正でしっかり目、エルマリートは卒なく程よいコントラスト、テレエルマーとアポテリートは近い描写で、非常に解像度の高いより現代的な描写です。私自身Elmar 135mmの描写がすごく好きなのですが、このレンズのデザインもあまり好みでなく手に取る機会が少なかったので、EVFのビゾフレックス(Typ020)でライブビュー限定でより使いやすくするため改造をすることに。
ビゾフレックス(Typ020)
ライカとビゾフレックス
そこで利用したのがビゾフレックスシステムのパーツ。この「ビゾフレックス」は先程のEVFのことではなく、ライカが昔レンジファインダー機を一眼レフ化するために生み出した後付の機構のこと(同じ名前でややこしいです)。ビゾフレックスのハウジングとプリズムを取り付けることでM型ライカは一眼レフ化され、レンズに入ってくる像をそのまま肉眼で確認することができるようになります。これによってライカはレンジファインダーの機構上、苦手としていたマクロ撮影や望遠の撮影を可能にし、撮影の幅を広げることで他のメーカーに対抗していたようです。
ただこのビゾフレックス、見え方は素晴らしいのですがライカのコンパクトさをスポイルしてしまうのと、やはり重量増のため気軽に使えないこともあり、あまり一般的に普及はしませんでした。ただし今はマウントアダプターも豊富にあり、ライブビューで撮影も可能な時代。ビゾフレックス用のレンズもアダプターを介して上手くつければ気軽に撮影を楽しむこともできます。
ライカビゾフレックスの活用法
昔のライカの一部のレンズはレンズヘッドだけを取り外せるように作られており、ビゾフレックスで一眼レフカメラとして運用できるようになっています。このElmar 135mm f4も先端のレンズ部分を回すとエレメントが取れてビゾフレックス用の鏡胴につけることが可能です。
左上がElmar 135mm f4のレンズヘッド。下段左から、OTSRO、OTRPO、OTZFO、ビゾフレックスⅢ
- OTSRO(16472)・・・レンズヘッドを取り付ける中間リング
- OTRPO(16471)・・・最短撮影距離よりも接写したいときにつける中間リング
- OTZFO(16464)・・・Mマウントのヘリコイド(内側に蛇腹付き)
ライカビゾフレックスのマウントアダプター
ただ現在はライブビューやEVFで確認することができるため、ビゾフレックスでの撮影にこだわらなければビゾフレックス本体を挟む必要もありません。理論上ビゾフレックスと同じフランジバックの筒状の何か(マウントアダプター等)を用意すれば最短撮影距離〜無限遠をカバーすることが可能となります。
IUFOO+Elmar 135mm f4(レンズヘッド)+OTSRO+OTZFO+ビゾ→Nikon F変換アダプター+Nikon F→Leica M変換アダプター+Leica M10-D
このようにNikon Fマウントへのアダプターを介して取り付けることもできます。ビゾ→Nikon Fは中華製のものにビニックスレザー(ライカの革の張替え等に使える高級合成皮革)を貼り、Nikon F→Leica Mはレイクォールのものを使用。
ライカビニックスレザー
ちなみにレイクォールからビゾフレックスⅢのフランジバックと同じマウントアダプターも出ています。VISO-LM
単純にビゾ用レンズを楽しみたいのならひとつあると良いかもしれません。 ただ、これでは面白くない(?)のでビゾフレックスのフランジバックを計算し、他のライカパーツで代用できないか考えます。
ライカ接写アダプターの活用
Elmar 135mm f4(レンズヘッド)+OTSRO+OTRPO+OTZFO+KIPON10mm 接写アダプター
ライブビュー専用で接写をするための両方Mマウントのリングが発売されています。KIPON製では8mmと10mmのMマウントーMマウントアダプターがあり、用途に応じて近寄る距離が変えられます。もう少し寄りたいという場合のテーブルフォトには8mmのほうを、物を画面全体を使って写し取りたいという場合には10mmをおすすめします。
上記の組み合わせでは、ビゾフレックスのフランジバックをOTRPOとKIPONのリングでかせぎ、撮影できるようにしています。この接写リングの組み合わせ、見た目もすっきり良いのでは?と上機嫌で撮影したところ、四隅がケラれました…
OTZFO(ヘリコイド)は内側に光の反射防止のために蛇腹がついているのですが、これにより通常のライカMマウントよりも鏡胴内部が数ミリ狭めになっているのです。つまりOTZFOはMマウントなのでそのままカメラにつくものの、ボディから距離を取らないと撮影に支障があるという仕様。
OTZFOの内面
ありそうなレンズデザインだがこのままではケラれて使えない
そしてライカ純正ではない接写アダプターを使っているのも個人的に減点ポイント。ちなみに10mmのMマウント-Mマウントの接写リングはOUFROというコードネームで純正がありますが、最近高騰気味です。ライブビューの接写として需要があるのでしょうね。
さてどうしたものか。と考えていたところ、繰り出し量の多いヘリコイド的なものをもうひとつ付ければよいのではと考え始める始末。ああでもない、こうでもないと考えている時間が何気に楽しいものですが、上手くいかなければ無駄な出費だけがかさみ悲しくなるオチが待っています。
そういえばMマウントのヘリコイドがありました。ライカマクロアダプターM。ただの伸びる輪っかが8万オーバーの強者。
ライカマクロアダプターM
これはマクロエルマー90mm用のアダプターで単体でも発売されています。18mmから30mmまで繰り出すことができ、どのMマウントレンズでもつけることができます。ただ、最低でも18mm繰り出すことになるのでちょっと寄りたいという場合には使えず、かなり寄ったマクロ的な使い方になります。
アダプターをのばしたところ
さて、、、冒険がはじまり何日が経過したのか。最終的に結果はこうなりました。
Elmar 135mm f4改
見た目すっきり、これは良いですね。無限遠を超えてオーバーインフから、OTZFO(ヘリコイド)の繰り出し量+マクロアダプターの繰り出し量が加わり、最短撮影距離よりも更に近づくことができます。更に寄りたければKIPONの接写リングやOTRPOを加えればOK。この組み合わせの良いところはヘリコイドをダブルでつけているので双方を最短にするとレンズの全長がかなり短くなるところ。フードは初代の12575 (IUFOO)が好きなのですが、ぎりぎり逆さ付けもできます(後期だと更にしっかりつけられる模様)。持ち運ぶ際にもコンパクト(更に分解もできる)、レンズ全体のデザインとしても往年のライカの素晴らしい作り込みを堪能できる形で非常に気に入りました。通常の使い方ではないですが、こういった遊びもできるよということで普通に飽きたライカユーザーの参考になればと。
となりに置いたTele-Elmar 90mm f2.8との比較。テレエルマーも90mmとしてはかなりコンパクトなサイズなので、今回の135mmレンズのコンパクトさが分かってもらえるかと思います。
ちなみにHektor 135mm f4.5のレンズヘッドがあれば単純に先端部分を差し替えるだけでOKです。あと他にもElmar 90mmやSummicron 90mmなどレンズヘッドを取り外せるものであれば応用が効くかもしれません。
いくつかこの組み合わせで撮った写真も載せておきます。
Leica M10-D Elmar 135mm f4
Leica M10-D Elmar 135mm f4
Leica M10-D Elmar 135mm f4
Leica M10-D Elmar 135mm f4
Leica M10-D Elmar 135mm f4
Leica M10-D Elmar 135mm f4
Leica M10-D Elmar 135mm f4
Leica M10-D Elmar 135mm f4
Leica M10-D Elmar 135mm f4
ライカの望遠は使いにくい、と昔からさんざん言われたものです。しかしそれは現代においては使い方次第かなと思います。ライカの望遠レンズは言うまでもなく広角や標準レンズと同じクオリティで作られており素晴らしいものばかりです。レンズ価格もかなり安価なものが多いのでビゾフレックスパーツを使って接写を楽しんだり、望遠スナップや望遠ポートレートでひと味違ったライカの楽しみを見つけるのも良いのではないでしょうか。
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