モノクロのすべて【モノクロ写真を極める】
色を決めるときに何となくモノクロ写真にしている人、多いのではないでしょうか?モノクロ写真とはそもそもどういうものなのか。モノクロ写真で気をつけることは何なのか。モノクロの性質のすべてを整理しつつ、その魅力を探ります。普段からモノクロに慣れている人も何か新しい発見があるかもしれません。
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モノクロとカラーとの違い
まず大前提としてモノクロとカラー写真との違いについて把握しましょう。
カラーは現実の色を写しているので現実の再現性が高いです。つまり「表現としての広さ」があります。一方モノクロは映し出している像をそっくりそのまま伝えるのではなく、像が表すイメージを増幅させて伝える「表現の深さ」があります。
多様な表現ができるカラー、イメージの深さを伝えるモノクロ。当たり前のようで改めて意識すると写真の撮り方も変わりそうです。
モノクロが持つ性質
ではモノクロで写真を撮るとどう写るのか。モノクロ写真が持つ性質は以下です。
- 非日常的になる
- 物質性が高まる
- 表層の奥に突き進む
- 叙情的になる
- 時間が止まる
写真がモノクロになり色情報が失われると、被写体は物質性が高まります。生き生きとした生の表現というより、時間が止まった「もの」として語らせる表現に近くなります。つまりそれは日常からの連続性がなくなり、叙情的な表現に見えることも多くなるということです。
これはモノクロ写真にすると自動的に付与される可能性が高い特性です。つまり自分が意図する、しないにかかわらずそう見られる可能性がある、ということは認識しておきましょう。
モノクロで上手く撮影するコツ
こういったモノクロ写真は、カラーとまた違って、特別な撮影方法や上手く撮るコツがあります。
- 光の表情を細やかにみせる
- フォルムと構図を強調する
- 階調とトーン表現にこだわる
- ディテールと質感を豊かに
- 要素を絞り込む
- 明暗差でシルエットを使う
ひとつひとつ見ていきましょう。
光の表情を細やかにみせる
同じ場所、同じシーンでも時間帯と季節によって光は大きく変わります。また影ができることで部分的に生まれる光もあります。モノクロ写真ではこういった表情をつぶさに見て表現し、陰影に物語を語らせるのがポイントです。
フォルムと構図を強調する
カラーと比べてモノクロ写真ではフォルムに目が行きやすいです。形そのものが自動的に強調されるので、フォルム、そしてそれをどういった構図でみせるのかが重要になってきます。
階調とトーン表現にこだわる
階調やトーンというのはモノクロ写真における情報量みたいなものです。そして多ければ多いほど一般的には写真は上質に見えます。逆にコントラストを上げていけば写真は形式上単調になっていきます。階調が豊かに濃淡が生まれやすいシーンを積極的に選びましょう。
ディテールと質感を豊かに
モノクロにおいてディテールや質感は写真の雰囲気をアップさせる重要な要素です。一方向からの光を上手く利用すれば立体感が生まれます。対象のテクスチャがよく分かるように撮ることを心がけるのも大事です。
要素を絞り込む
モノクロになり色がなくなると、ある意味画面が平面化されますので、色分けによって立ち上がっていた構成が失われて画面が煩雑になりがちです。あらかじめ要素を絞り込むことで見せたいものが客観的に浮き上がってきます。
明暗差でシルエットを使う
シルエットを使った表現は象徴的なので、人を分かりやすく引き付ける魅力のある写真になります。これを予測して撮れるようになるとモノクロで良い写真となる確率は大きく上がります。
モノクロの表現を極める
モノクロだからこそできること、モノクロだからこだわれるポイントというのが存在します。もしモノクロにこだわった写真が撮りたいのならモノクロ表現を更に極めてみるのも良いでしょう。下記にいくつかモノクロ限定の表現やポイントを紹介します。
陰影の中から立ち上がるもの、闇との戯れ
個人的にモノクロ写真に大きな魅力を感じているのがこれです。日本には陰翳礼讃という言葉がありますね。光を一定数遮断した空間からものを見ることで見えてくるものを写し取る、つまり闇とあえて向き合ってみることで新たな可能性を発見する行為です。
対象が語るように、ディテールを表現する
例えば一本の木をカラーで写し取った場合、木は木にしか見えないかもしれませんが、これをモノクロで、そして樹皮が強調されるように撮った場合、途方もない年月の積み重なりや、老いた人のようなイメージが湧きやすくなります。
モノクロにするというのはディテールにクローズアップすることです。全体よりも細部から写真イメージをつくる、こういう流れが作れるのはモノクロの醍醐味だと思います。
ノスタルジーとしての写真
写真は撮った瞬間にそのイメージが過去になります。そしてモノクロは色情報が失われ、写真が始まったときの古典的な表現と同じになるわけなので、よりノスタルジックになります。
写真を収めた瞬間を意図的に過去にするとは、どういうことなのか。ここを紐解けば何か新しいイメージが湧いてくるかもしれないですね。
またカラーでは使いにくかった痛みの強いレンズや滲み効果のあるレンズはモノクロにおいて非常に上手く作用すると思います。
特殊なテクスチャとしての気候やシーン
日常的に撮りやすいシーンはカラーで「日常的」に撮るのが良いですが、非日常感を演出したいのならテクスチャとして機能するものを入れてモノクロで撮ると大きく写真が変わります。
例えば雨の日、例えば落ち葉や花びらがたくさん落ちている場所、霧や煙など、特殊なテクスチャを日常にプラスして、それをモノクロで収めれば圧倒的な画面を作れます。色情報がないからこそ、濃淡として馴染む素材を探してみてはどうでしょうか。
モノクロ写真の効果的な現像方法
バッチリ撮れた写真でもやはり細部をつめていくと写真の完成度は大きく上がります。以下は私がよくやるモノクロ表現をより印象的に見せる効果的な現像方法です。
大前提としてRAWで撮る
モノクロ写真を撮るには大前提としてRAWで撮るのが有効です。色情報を残しておくことで個別のカラーに対して現像設定をアプローチできます。例えばカラー写真だと目立たない色がモノクロ写真だと目立つ場合、その色の明暗を調整することで馴染ませる、などが可能になります。
トーンカーブを利用する
トーンカーブは画像の濃淡を調整するツールです。画面に破綻がない範囲で、明るいところを少し暗くしたり、逆に暗いところを明るくしたりできます。モノクロ写真全体を眺めて、写真の完成度がより上がる方向で細かくトーンを調整していくと良いです。
焼き込み/覆い焼きで印象深くする
焼き込み(部分的に暗くする)や、覆い焼き(部分的に明るくする)を上手く使えば視線誘導がしやすくなります。例えば人の顔に視線を誘導したくてもモノクロのため周りと馴染んでしまっている場合、人の顔を覆い焼きすれば周囲とのメリハリが出て見やすくなります。不自然にならない範囲でやるのがコツです。
トーニングを調整する
現実世界に完全な黒や白がないように、モノクロ写真も完全なグレートーンである必要はありません。ちなみに私はモノクロ写真に現像する場合、シャドウとハイライトにほんの少し色を入れています。特に黄色〜赤色を薄く入れるとよりモノクロの性質が際立ってきます。
粒子を追加する
高性能なカメラやレンズを使うほどに画面はクリアになりますが、モノクロの場合多少ノイズがあったほうが写真の説得力が増す場合があります。現像ソフトでくどくない程度のグレインを足せば写真の質感アップに繋がります。表現の方向性にもよりますが、何か足りないと思ったらちょっとだけ足してみてください。
モノクロが美しく際立つ写真集
Ansel Adams 400 Photographs
Michael Kenna PHOTOGRAPHS AND STORIES
Olivier Du Tré Seeking Stillness
モノクロのすべてのまとめ
モノクロの性質についてまとめてきましたが、こうやってみるとカラー写真とまったく性質が違うものだということがわかります。モノクロは馴染みがあるので安易に選んでしまいますが、少し立ち止まってモノクロにするというのはどういうことなのか、自分なりに考えてみるのも良いと思います。
なおモノクロ写真について徹底的に向き合いたいならモノクロ専用カメラがおすすめです。カラーで撮っておくという退路を断つことで世界が完全にモノクロベースになります。写りもモノクロに特化していますので一歩進んだ表現に手が届きやすくなります。
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