【本音】ライカM11 モノクロームから見るライカの「選択」
ライカM11 モノクロームが2023年4月に発売されました。
ここで話したいのはなぜカラーフィルターを除いたか、のようなライカユーザーだと聞き飽きたネタではなく、ライカと拡張される写真メディアのあり方をライカM11モノクロームから紐解くという内容だ。個人的な推測も加えながらちょっと考えてみたい。
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ライカM11モノクロームというモデルへの期待
私はライカM11モノクロームが発表されたとき少し期待した。なぜならこのモノクロームモデルというのはベースとなるモデルをモノクロ専用にし、更にちょっとしたバージョンアップを加えることで新しい使いみちを提示してきたからだ。初代モノクロームも、Typ246も、M10モノクロームもそうだったと思う。
しかし今回のM11モノクロームはこれまでのモノクロームを知っている人からすると微細なアップデートに過ぎないと感じてしまった。初期のiPhoneのモデルチェンジのような感動が本来モノクロームにあったが、次々とアップデートされてどう違いがあるのか分かりにくい、こういった流れになりつつあるように感じたのだ。そしてこれはライカM10からM11への変化がベースになっていることも関係していると思う。
ただよく考えてみると、ライカはこれまで革命的な機能を加えて何か大きな変化を起こしてきたかというと、M型に関しては実はそうでもない。もちろんそのときどきの技術力で得られる最高の写真画像に対して強いこだわりを持ち、それを探求してきたが、基本的には伝統のM型を守ってきた保守的な立ち位置のカメラだと思う。
ライカは撮る視点を先鋭化させるだけ
ライカは、というかM型ライカはこれからも撮影者のクリエイティブを誤魔化すような機能をつけないだろう。そういったものはTyp240で動画機能をつけて不評だったことでライカ自体が理解したからだ。「写真を撮ること」以外のチャレンジはターゲットをセグメント化させた上で他のモデルで行うのだろう。
じゃあM型ライカは古臭いカメラになってしまうのか?装飾品になって、どんどん高くなっていって、特殊な趣味専用カメラになるのか?
様々な画像生成や拡張する写真という分野から置いてけぼりにされて、自称プロが自分の立ち位置を誇示するために見せびらかすカメラになってしまうのか?
実際そういう見方も出てくると思う。いや、そういう見方がすでにある。しかし写真を理解すればするほどにライカには「写真を撮る視点を先鋭化させる」という衰えないメリットがあることを伝えたいと思う。
ライカを手に取るとは、写真メディアの進化と距離を置くこと
ライカを手に取るというのは、写真メディアの進化と距離を置くことだと思う。これはネガティブな意味ではなく。
写真はこれまで現実を写し、虚構を写し、画像を作り出し、空想を描き出してきた。これからも進化して「現実らしいリアル」をどんどん生成していくだろう。
しかしこんな時代にただ写真を写すだけのライカを持つというのは、そういった有象無象のイメージの渦からちょっと距離を置くということだと思っている。「距離を置く」というと「私には関係がない」というスタンスを取ることのように思えるかもしれないが、そうではなく、「ライカを手元に置くことでそういった写真メディアを俯瞰する立ち位置を持てる」といったほうが分かりやすいだろうか。
ライカは疑いもない究極にシンプルなカメラだ。あまり機能もないので、コンピューターテクニックを駆使して精密に画像を収めるというスタイルには向いていない。だから目の前のものを写すか否か。ただその判断をするためだけのツールだと私は思っている。
写真という言葉が示すものとカメラ
写真というものはすでに「何を写すか」よりも、「どういうイメージ、どういう景色を創造して見せるか」という、カメラの外側の話のボリュームが増えすぎしまった。ただシンプルにカメラと向き合っているだけでは、「あなたがやっているのは写真のほんの一部だよね?」と言われかねない風潮もある。
それこそ呼称を変えて、それぞれの分野を競技のようにルール化できれば分かりやすいのかもしれない。例えばシャッターを押して写したものだけが写真その1。その他にフィルターやCG処理、もしくはPCによる生成が含まれれば写真その2のような感じだ。しかしそんな単純な話でもないし、それはそれでつまらなくなってしまうこともあるだろう。
そういった複雑で、目まぐるしく変化し、曖昧すぎる「写真」という言葉でくくられる世界に身を置いてしまった人こそ、私はライカを持つべきだと思っています。なぜなら結局写真というイメージを作り出すのは個人の思考であり、それを形にする身体性だから。それはどれだけ多目的なカメラが生まれようと、CG技術が進化しようと、AIが進化しようと変わらないと思う。
「人間の意図」に人は感動をするし、そこに意味を求める。ぶっちゃけた話、創作物というのはそれ以上でもそれ以下でもなく、シンプルな人間びいきの世界だけの話なのだ。
そういう人間の意図がダイレクトに反映されるのがシンプルなカメラであり、その代表がライカだと思う。
ただ目の前のものを撮るか否か。そこには写真を形成する言語の文脈が流れ、さらにそれらを写真で上手に伝えるには技術が必要になる。そこに身体性が生まれる。この身体性は写真というメディアでの最もプリミティブな身体性だから、いかに写真が多様になろうとも侵される領域ではないと思う。
この究極の立ち位置「ライカ」を持ちながら、今後の変化をゆっくり眺めれば良い。そして時には新しい技術を使って新しい表現に人の意図が見出だせるのであれば使えばいい。
ライカはただカメラを作る、後は好きに選ぶ
最初に話を戻そう。ライカはM11 モノクロームを堅実に作り、発表した。またひとつライカの選択肢が増えた、ただそれだけの話。M型ライカは進化はしている。ただ拡張する写真に対応した進化ではなく、あくまでこれまで話したライカの立ち位置内での進化だ。
私が話すようなライカを持つ意義を感じた人が、「さぁどのライカにするか」とライカを選ぶ。そのときに最新のスタンダードをライカはただ用意しているに過ぎない、と考えると諸々納得がいく。
写真という発展途上の特殊なメディアと隣合わせに生きていくときに、私の中でライカは常にその基本になる。自分で考えて、動いて、シャッターを切る。ただそれだけの写真だった時代は終わろうとしている。そんな時代だからこそライカを手に取り、じっくりと向き合う必要があるのだ。
それが本当に人が意図する表現なのか、それとも、ただの見せかけの新技術なのかどうかを。
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