ライカM10-Dを5年使ってみて【M11-Dへつなぐ】
ライカM10-Dを使い始めて約5年ほど経った。どこへ行くにもこのカメラとずっと一緒だった。数え切れない写真を撮り、自分の手の延長のようになっているライカM10-D。M11-Dが発表されたのでこのタイミングでM10-Dについて振り返ってみようと思う。
購入当初はかなり思い切ったモデルを選択したなと思っていた。一般的ではないから市民権は得られにくいだろうなと思っていたら案の定すぐにディスコンになり、レアなモデルとなった。最初は使っている人もあまり見なかった。
一方人気のほうは徐々に上がっていった。この記事を書いている現在でも中古価格は上昇している。マイノリティな選択をしたと思っていたら後で妙に流行りを迎えることはよくある。ズミルックス35mmのいわゆる2ndのように。
使い込んでいくうちに様々な発見、気付きがあった。良いものもあるし悪いもの(といっても軽微なものだが)もある。これらをカメラの機能的なもの(技術的な側面)と撮影者側のもの(精神的な側面)に分けて上げていきます。
- マウント
- Mマウント
- 撮影形式
- デジタル
- タイプ
- M型ライカ
- レンジファインダー
- 0.73倍
- シャッター最高速
- 1/4000
- シャッター最低速
- 125s
- ISO
- 100〜50000
- 撮像素子
- 35mmフルサイズ 2400万画素 CMOSセンサー
- 露出モード
- 絞り優先AE、マニュアル
- 液晶モニター
- なし
- サイズ
- 139×80×39mm
- 重量
- 660g
- 製作年
- 2018-
- カラー
- ブラック
- 市場価格
- 約750,000-850,000円
CONTENTS
ライカM10-Dの技術的なもの
ライカM10-Dサムレストレバーは必須に
何はともあれこれに尽きる。このレバーがあって完成されたライカの形状だと思うようになった。形状も美しいし実際片手でホールドするのに非常に役に立つ。一般的なサムレストと比べて収納できるのも良い。すべてのライカにつけるべきだと思うけれど、電源スイッチ周りの関係で難しいのだろうか。
ライカの背面液晶はやはりいらない
難しい問題だが、大きな視点で見たときに背面液晶はやはりいらないなと感じた。必要性を感じるのは仕事で失敗できないときや近距離撮影時でVISOFLEXがないときなどだろうが、こういう細かい確実性を求めるならそもそもライカではないほうが良いという考えもあり、大きな視点ではいらないという結論に達した。
VISOFLEX(Typ020)はあくまで補助的
外付けの電子ファインダーVISOFLEXはすごく便利。形状もM11のそれよりも好み。しかしSL系のように見やすいわけではないのであくまで補助的なものだと思う。最も気になるのはシャッターラグ。シャッターボタンを押してから絶妙な間の後にVISOFLEXのシャッターが降りる。この撮影リズムのズレは慣れが必要。
また一度VISOFLEXをつけて電源をオンにするとVISOFLEXは常にライブビューを表示しているので電力消費が気になる。これも撮影のリズムをやや邪魔する。ちなみに私は75mmまではレンジファインダーで撮り、それ以降はVISOで撮ってます。
ライカM10-Dではオールドレンズばかり使っているとどれで撮ったかわかりにくくなる
6bitコードがないレンズはレンズ認識ができない。オールドレンズで撮った写真をSDカードに溜めっぱなしにしていると、どのレンズで撮ったか時々分からなくなる。撮る前か撮った後にそのレンズの情報を何らかで記録しておくことで対応している。
ライカM10-Dとleica fotosとの連携はまぁまぁ
leica fotosのアプリとの連携は接続時にやや時間がかかる。そしてタイミングがシビアなので地味にストレスでもある。ここがスムーズでスマホ〜ライカの連携が強力であればより新しい体験に繋がったかもしれない。
ライカM10-Dは物理ボタンを活かせていない
M10系にはいくつか物理ボタン、ダイヤルがあるがほぼ使わない。これらを組み合わせて様々な機能を実装できそうなものだが、最後までファームウェアアップデートはなかった。VISOのオンオフやメニュー画面の表示などあっても良かったが、そうなるとシンプルなカメラではなくなる。潔さとのトレードオフだと感じた。
ライカM10-D精神的なもの
ライカM10-Dは完璧な撮影体験
最初に電源を入れておく。被写体を見つけたら露出を決める。ピントを合わせてシャッターを切る。以上。画像の確認ができないのでその時の自分を信じるしかなく、1ショットずつの後悔がない。何度も取り直しをする意味がないので1ショットに集中する。
二本の矢を持って的に挑んだ初心者をその師匠が忠告する話がある。矢は一本にしなさい、と。二本持つと後の矢を頼みにして最初の矢をおろそかにするからだ、と。
これはライカM10-Dにも当てはまるような気がする。もちろんデジカメなので何度も撮れるわけだが、写真が1回性を重要視するメディアであることに意識的になるメリットは大きい。
ライカM10-Dでは何が撮れるのかわからないのが楽しい
ライカ、つまりレンジファインダーの良いところは何が撮れるのかわからないところだ。写真というのは3Dの立体空間を無理やり平面の二次元に収める行為なのだけど、平面としての写真を想像して撮るのがミラーレスだとすると、空間や被写体の魅力にダイレクトに迫るのがレンジファインダーの撮り方だと思っている。
写真は撮れたものがすべてではあるのだが、シャッターを切る→平面としての美しさを確認する、といった答え合わせだけをしているのでは写真を撮る者として片手落ちだ。現場では「平面になったもの」の良し悪しよりも、「どう3Dを認識するか」のほうが大切だと思っている。
だからVISOFLEXで撮ると、どうも「わからない」がなくなってしまって面白くない。
ライカM10-Dでは構図が美しいだけじゃない写真を撮れる
これも上記と同じような内容ではあるが、このAI時代に構図が美しいだけの写真は個人的にあまり意味を感じられない。だからカメラは大なり小なり「イベント」を撮らなければいけない、ということをこのカメラに気付かされる。
ライカM10-Dで撮れた写真をスマホで見るときにけっこうな感動がある
撮った写真をLeica fotosアプリで見ると現像が仕上がってきたみたいな感覚になる。大抵は時間をおいて確認することが多いので、撮ったときの感覚がふわっと思い返せるのがとても心地よい。何だかあのときのシャッター行為がゆっくり時間をかけて写真データになったような気持ちさえ湧いてくる。
フィルムでこういった経験を大事にしている人にはライカM10-Dはとてもおすすめだし、フィルムのそういった部分に憧れている人も満足してもらえるカメラだと思う。
ライカM10-Dを5年使ってみたの総括
いろいろ書いたが、今はこのカメラに勝るものは他にない。ライカM10-Dはもっともマインドフルネス効果のあるカメラであり、永遠の相棒のような感覚でいている。
もっと機能を求めることもできるがそういう人間はスタンダードなM10やM11を使えば良いのであって、引き算によってもたらされる精神的な恩恵は大きい。そう、茶室や美術館に入ったときのような、心がすっと落ち着き整う感覚がこのカメラにはある。そしてそこから見えるのは写真本来の魅力や突き詰めるべきものを暗に示す視点である。
大げさかもしれないが、カメラひとつで大きく「見る」が変化するのがこのライカM10-Dだ。もしこのようなカメラに興味があればぜひ手にとってみてもらいたい。
X(@soyumn)やってます。
ライカで撮った写真やライカ関連ツイートを日々更新中。
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