写真と自己承認欲求の話

突然だが、最近写真がよくわからなくなってきた。そもそもどうして写真を撮るのか、と。

写真について悩んでいる人はちょっと読んで欲しい。

写真と苦労と自己承認

写真を撮ると誰かに見せたくなる。「どう私の写真?」「こういう状況で頑張ってやっと撮れたんだ、いいでしょ?」

みんな自分の苦労、写真に対する情熱を誰かに認めて欲しい。だからtwitterやインスタ、ブログなどで写真を見せ合う。

残念だが自分の苦労は写真には表れない。そしてその苦労に誰も興味はない。そして写真というのは「見せ方」が上手ければくだらない写真であってもそれなりに人の目を引く。そうやって人の目を集めた先に何があるのか、きっと何もない。それはただ、自己承認欲求を満たすためだけの行為としての結果だけだ。

心理学者のアルフレッド・アドラーはこう言う。私達は馬を水飲み場へ連れて行くことはできるが、実際に水を飲むかどうかは馬が決めることだ。

つまり他人に自分が思うような行動をさせるのは無理だし、そこに期待をしてはいけない。誰かから認められるためだけに写真を撮ってはいけないのだ。特にSNSのような不特定多数の他人がいるような場所では言うまでもない。

写真を撮る意味と欲求

私自身は、「私自身のために写真を撮っている」と思っていた。撮影という行為自体が好きだし、写真というか視覚メディアが大好物なのでそれについて考えるために撮っていた。しかし何を隠そう、結局写真を諸要素へ投稿し、ときに「いいね」的な反応があるとそこに思考が割かれる。

こういう写真が受けるんだな、なぜこういう写真を人が良いと思うのだろう?もっとこういう写真を撮ればもっといいねがついて自分の行動が認められるのでは?

この思考はすごく危険だ。

この思考は、気が付かないうちに見えない誰かのためにやんわりと自分を捻じ曲げてしまう考えだ。

こういう動きがちょっとずつ渦を巻いて時折大きなムーブになっているのをよく見る。もはやそこに自主性はなく、誰か(いったい誰なんだ)がきっと「いいね」と言うであろう写真の構成を模倣した、その人自身もなぜそれを撮りたいのかよく分かっていない写真がネット上で無限のように生成されている。

撮影する欲求と記憶

自分が初めてカメラのファインダーをのぞいたのはいつだっただろうか。きちんと記憶しているのは、小学生のときに街中でいきなり写ルンですを渡されて、「私達をちょっと撮ってもらえますか?」とお願いされたときだ。

どこをどう切り取れば良いのかまったく分からずに、とりあえずフレーミングしてシャッターを切ったが、あれはどう写っていたのだろう。その後写真をなぜ撮りたいと思うようになったか、もうまったく思い出せない。

写真の意思と撮る欲求の関係

今自分が興味があるのは「完全に自己承認欲求を捨てる」ことだ。

自己承認欲求自体を完全に否定したいわけではないが、その欲がないところで世界がどう見えるか、にとても興味がある。

もちろんどんな写真家も、どんな写真の現代アーティストであっても、自分の作っているものが「良い」と思って作っている。結局、自分なりの視点や問題定義を認めてもらいたいのだ。自分なりの認めてもらいたい「良い」を「意図」という名に変えて、その意図を現代の文脈で評価されることを望んでいる。

果たしてこれは純粋な行為なんだろうか。いや、純粋ってそもそもなんだという話でもある。

写真を承認することの意味について

ひとつ言えるのは星の数ほどいる他人が「おれを認めてくれー」と言いながら写真をアップしまくっている。これは単におぞましい現状だということ。

絵や造形物と違いシャッターを切れば簡単に「作品」という台座に載せられるからこそ写真は厄介だ。たまたま今日の青い空を撮ってアップして「認めてくれ」と言われても我々にはどうしようもない。本当の意味で「作品」を作れるようになるのは、自分ひとりで自分を認められるようになってからなのだ。

もし、こんなことがあったら面白いと思う。それは、「これは何を撮ったのですか?」と聞いたら「いえ、特に何も撮りたいものがなかったのですがシャッターを切りました」と答える作者。しかしその写真はべらぼうに素晴らしい。作者本人には意図がない。しかし成果物としては価値があるというパターン。この写真は評価されるだろうか?いや、きっとされないだろう。

この承認の渦と切り離せないのが写真、と言い切っても良い気がしているが、果たして…

どうして人間はこんな面倒なものを作ってしまったのか、そしてどうして人はこんな面倒なものに惹かれて新たにいろいろ意味付けをしてしまうのか。はぁ、まいったな、、、と思いながら今日もライカを持って外に出かける私であった。

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ライカで撮った写真やライカ関連ツイートを日々更新中。

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